男性不妊症
男性不妊症
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不妊症とは?
不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が一定期間、避妊をしないで性交渉をしているにもかかわらず、妊娠しないことをいいます。この一定期間については、1年間というのが一般的です。
不妊症は近年、どんどん増加しており先進国の妊娠適齢期の男女の10人に1人は不妊症の可能性があるといわれています。日本においても、ご夫婦の5組に1組は不妊治療を受けた経験があるというデータがあります。
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男性不妊症とは?
このうち男性不妊症とは、男性側に妊娠しにくい原因がある状態を指します。カップルの不妊症の約半分に男性側の要因が関与しているとされています。
男性側の原因には、精巣で精子をつくる能力の問題(造精機能障害)、生み出された精子を放出する経路である精路の問題(精路通過障害)、性交渉や射精がうまくできない性機能の問題(性機能障害)などがあります。 -
男性不妊症の診断
男性不妊症の診断には以下のような診察・検査が必要です。
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男性不妊症の診察・検査
①問診
②身体診察
③超音波検査
④尿検査
⑤精液検査
⑥血液検査
(性ホルモンや性感染症の検査)
⑦染色体・遺伝子検査
このなかでも最も重要なのが精液検査です。
2~7日間程度の禁欲期間の後、射精によって採取した精液を分析することで精子の濃度や運動率を調べます。
当院では一般的な顕微鏡による検査にくわえて、精液検査機器世界60ヵ国以上で導入されている自動精液分析装置「SQA-iO」を導入しております。こちらの分析装置を使用することで、一般的な精子濃度や運動率にくわえて、顕微鏡による目視検査では判別が難しい前進運動率、正常形態率、SMI(精子運動性能指数)などの数値を計測することができます。
→ SQA-iOについて詳しくはこちらをご参照ください。自動精液分析装置「SQA-iO」内分泌学的検査では、男性ホルモン(テストステロン)や精子形成に関係する性腺刺激ホルモン(LH、FSH)やプロラクチンの値を調べます。
また精子数が極端に少ない場合や無精子症の場合には、染色体・遺伝子検査を追加する場合があります。 -
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男性不妊症の治療
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1生活習慣の改善生活習慣のうち喫煙、過度のアルコール、長風呂やサウナなどの高温環境、過度のストレス、疲労、食生活の乱れ、肥満、不規則な生活リズム、睡眠不足などは精子形成に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの習慣を避けて健康的な生活を心掛けていただくことで精液の状態がよくなる可能性があります。
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2外科治療
造精機能障害の一部は精索静脈瘤が原因とされています。精索静脈瘤とは、精索という精巣への血流を担う血管に血液が逆流して静脈瘤ができる病気です。静脈瘤に血液がうっ滞し、精巣内温度の上昇や低酸素状態を起こすことで精子形成に悪影響をおよぼすと考えられています。
精索静脈瘤を手術で取り除くことで精液所見が改善する可能性があります。これを精索静脈瘤結紮術といいます。現在、局所麻酔での顕微鏡下手術が標準的な手術方法となっています。手術によって精液所見が改善する確率は、静脈瘤の重症度によって異なります。中等度の精索静脈瘤患者様の2人に1人、重症の方であれば三人のうち二人に精液所見の改善がみられます。また精液中に全く精子がみられない無精子症の場合、精巣内精子採取術(通称TESEという手術で精巣から直接精子を回収し、体外授精による妊娠を目指すのが一般的となります。
これらの手術については日赤和歌山医療センターと連携し、男性不妊外来にて局所麻酔による日帰り手術を行っています。どちらの手術にも保険が適応されます。
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3薬物治療
乏精子症、精子無力症の半数は、はっきりとして原因を見つけることができません。このような患者様には薬物治療がおこなわれます。使われる薬剤としては補中益気湯、八味地黄丸、牛車腎気丸などの漢方、他に抗酸化作用をもつサプリメントやビタミンB、ビタミンC、ビタミンEといったビタミン製剤が一般的です。当院では患者様が通っていただきやすいように院内調剤にて各種治療薬を取り揃えております。
また性機能障害のうち、EDについてはPDE5阻害剤というED治療薬が有効である場合があります。こちらについても院内調剤で対応することが可能です。薬物治療が無効な場合は、精巣内精子採取術による精子回収と体外受精によって妊娠を目指す方法が選択肢となります。
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最後に
男性不妊症は、適切な検査と治療で改善できることも多い病気です。
もしご不安に感じておられる場合は、ぜひ一度当院へご相談ください。
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